ぼくのかわいいひと

7

3年生が全て引退したバスケット部は2学年体制に移行、副主将の言うとおり、2年生を基本にしたチームながら、その要は藤真だった。現在の監督はお喋りなタイプではなくて、フォローも気遣いも少ない人だったが、その代わり根拠のないスポ根思想もなかった。なので藤真がチームの要であることは、部員たち全員が勝手に感じ取ったことだ。

とはいえそれは藤真本人も望むところだし、2年生も特に異論はなかった。それだけ藤真の果たしている役割は大きい。だからと言って傲慢な態度を見せるようなタイプではないので、やっぱり部員たちからは慕われるし、しかしそれは裏を返せば、何もかも「藤真頼み」ということでもあった。

本人はそれを重圧には感じなかったし、やり遂げてみせるという意欲はあったし、翔陽は藤真を真ん中に置いたチームとしてまとまり始めた。ことスポーツに限らないが、こうしてひとりポツンと求心力の強い人物が集団の中にいると事はスムーズに運びやすい。特に反発心の弱い日本人ならなおさらだ。

というところで、部員数が減ったのでの負担が減る――わけはなく、は3年生の引退を機に監督や顧問の先生にマネージャーの募集をかけるよう頼み込んでいた。

藤真はそれをどこか冷めた目で見ていた。期末前に目撃してしまったことが響いて、このところ一緒に帰ることも少なくなっていた。自分でも呆れるくらいにのことは今でも好きだったし、花形たちの言うように、と副主将がコソコソ付き合っていたとも思えないし、ただいつも通りに振る舞える自信がなかった。

だが、終業式の日、クリスマス・イヴだというのに普通に練習で、例によって忙しいので彼女がいる部員は少なく、普段メンタルケアにはあまり積極的ではない監督からの指示で部室には大量のチキンが用意されていた。HRが終わったが駅まで出て引き取ってきてくれたものだ。事前に予約してあったらしい。

特に寮生は寮に帰っても特別な食事が出るわけではなく、もちろんケーキもないし、例え彼女がいても連れ込めるわけでなし、それなら仲間たちと部室でチキンの方が気楽で楽しい。予算の都合とがひとりで運搬できる量には限りがあるので腹いっぱいというわけにはいかないが、それでもちょっと楽しい。

練習が終わってからチキンとジュースでクリスマスっぽい雰囲気を楽しんだ部員たちは機嫌よく帰っていったが、その後片付けをするのはひとりだ。さすがに可哀想になった藤真が自主的に残って手伝っていたのだが、いつも通りに振る舞おうとすればするほどぎこちなくなってしまう。

「昔は寮でクリスマスパーティーやってたらしいよ」
「食堂で、ですか?」
「その辺はよく知らないんだけど、寮生じゃない部員も呼ばれてたって」
「まあでも、なくなった理由はわかる気がしますね」
「あはは、だよねー。女子ならともかく、パーティやってもねえ」

も特に変化はない。もちろん元副主将と一緒にいるところを目撃されていたことなど知らないだろうし、全員帰ってしまった部室にふたりきりでもいつも通りのだ。

「私も別にクリスマスにこだわりはないんだけど、プレゼントは欲しいよね……
「またパンダですか」
「それも歓迎。パンダじゃなくても歓迎。いやもうクリスマスじゃなくても別に」

ぶつぶつと物欲念仏が出てきたのを聞きながら、藤真は後悔で手に掴んでいたペットボトルを握り潰した。バカかオレは! なんでクリスマスプレゼント用意しておかなかったんだよ! パンダグッズ好きっていうプレゼント選びやすい情報だってあったのに!

その上冬の選抜本戦には進むことが出来なくて、時間には余裕があった。後悔はつのる。

「あー、プレゼント、用意してませんでした。ごめんなさい」
「え!? なんで謝るの、そんなの当たり前だよ。てか催促したみたいでこっちこそごめん」
……何か、欲しいものあったんですか?」
「そりゃあ、あるよ! 今年はバッグが欲しいなって思っててさ」

自分でも買えそうなものならプレゼントしてもいいなと考えていた藤真だが、やけに値の張りそうなご要望が出てきた。質素な寮生、お小遣いには限りがある。3000円くらいでなんとかなるものならと思うが、難しそうだ。

「でも親に誕生日プレゼントを減額してもいいならって言われちゃって」
「いくらぐらいするものなんですか?」
「欲しいなって思ってるのはちょっと高くてさ~! バイトが出来れば自分で買うんだけどねー」

ちくしょうオレが石油王の息子だったら……と思うがどうにもならない。高いバッグを欲しがるに駅ビルのアクセサリーショップあたりで買ったペンダントなど余計なお世話だよなと藤真はちょっと気持ちが折れた。が、

「もしくは石油王の彼氏がいるとかね……えへへオイルマネー」

自分の脳内イメージと同じことを言い出したので、つい藤真は吹き出した。だが、その隣では笑いながらとんでもないことを言い出した。

「だからつい大地先輩に頼んじゃったんだよね。悪いなと思いつつ、物欲に勝てなくて」

……なんだって?

「しかも現物見ちゃったら罪悪感とかもうほんと宇宙の彼方に飛んでっちゃってさ……

ちょっと値の張るバッグを、高校3年生の大地先輩が、プレゼントしてくれるのか?

「だけどもう卒業だしいいかって。マネージャー頑張ってきた甲斐があったよ」

それにしては恋愛関係を匂わせないことばかりは楽しそうに話している。また藤真の心の中でに対する恋心と嫉妬と怒りが全て混ざりあってどす黒く変色していく。どういうことだよどういうことだよ、と大地先輩どうなってんだよ、オレはなんなんだよ、、何を隠してんだよ。

……大地先輩が、そんな高いバッグ、買ってくれるん、ですか?」
「えっ、そんな毎回じゃないよ!? 今回はほら、引退するって言うんで特別に」
「普通は、後輩の方が、引退する先輩に贈るんじゃ、ないんですか?」
「そ、そうなんだけどね、お礼にとか言ってさ、何でも好きなものでいいって言うから」

おそらくは藤真の言うように後輩が贈るべきところを買ってもらってしまった、ということに対する照れだっただろう。は恥ずかしそうにはにかんでいる。だが、混乱激しい藤真の目には、好意的に思っている男から素敵なプレゼントをしてもらって喜んでいる女の子にしか、見えなかった。

「なんか、付き合ってるみたいですね」
「えっ?」
「すごく、親しいんですね、先輩と大地先輩」
「え、ちょ、ちょっと待った、今はそういう関係じゃないよ」

今は!?

藤真の嫉妬心に火がつく。今でないなら過去、それともこれからそうなる予定だとでも? オレとは夏祭り、くっついて花火を見たのに? ずっと手を繋いで帰っていたのに? もう何度も抱き締めて何度もキスしたのに? なのにそんな嬉しそうな顔して大地先輩のこと話すの?

「今はって……
「え、ええとその、ここだけの話にしてくれる?」
「何をですか……
「私が24になったら、結婚、してもらうことになってて」

あまりといえばあまりの展開に藤真は手にしていたゴミ袋をどさりと落とした。は? 結婚? 結婚て。幼稚園児の約束じゃあるまいし、夢物語のようですぐ近くまで迫ってきている将来という名の現実じゃないか。何言ってるんだ。24になったら結婚するけど今は付き合ってない? 何言ってるんだこいつ。

バカじゃねえのか。バカじゃないと思ってたけど本当にバカだったんだな。救いようのないバカだ。

だけどどうしてそんなバカがオレは今でも好きなんだよ!!!

ぷつりと糸が切れたような感覚を覚えた藤真はの腕を掴むと力任せに引き寄せて顔を近付けた。

「わっ、どうし――
「そういう相手がいるのに、オレともキス、するんだな」
「な……
「他にも付き合ってる振りとか婚約とかしてる男がいるの? そういう趣味だったんだね」
「え、違、ちょっと待って藤――
「ちょうど誰もいないし、慰めてよ。この間みたいに。今度はキスだけじゃなくて、他のことも、してよ」

両腕を掴まれて至近距離で詰め寄られたは怯えた目をしてすくみ上がっている。そんな表情ですら可愛くて、めちゃくちゃにしてやりたい衝動に駆られた藤真はそのまま乱暴に唇を押し付けた。これまでは抵抗らしい抵抗もしなかったが逃れようとしてもがく。

「やめ、やめてお願い、やだ」
「なんで? 他の男ともやってるんでしょ? オレともしてよ。ソファでいいよね? あ、もしかしてあのソファって、それ用のものだったの? マネージャー辞めようとしたけど泣きつかれて思いとどまったって言ってたけど、マネージャーってそういうためにいるものだったの? なにそれ、AVみたい」

壁に押し付けてまくし立てていた藤真は、その勢いのままの体をまさぐった。そのせいで腕を解放したので、両手が自由になったは腕を突っ張って身を捩ると、片手を振り上げて藤真の頬を思いっきり打った。

「そっ、そっちこそ、女に困ってないくせに、ちょっと人気があってかっこいいからって、バカにして」
……
「好きな時にキスとかエッチとかしたいんだったら、私で済ませないで自分で捕まえてきなよ!!!」

は真っ赤な目をして泣いていた。一瞬で藤真の全身の温度が下がる。

「健司くんのこと好きだっていう女の子なんて、いくらでもいるじゃん!!!」

請われたわけでも付き合っている振りを見せないとならない状況でもないのに、は藤真のことを「健司くん」と呼んだ。それが胸に突き刺さる。藤真は涙の伝うの頬に指を滑らせた。大好きな大好きな女の子の涙はあまりにも心を抉る。

……
「あんなに、シールいっぱい、あったんだから……

シール? と藤真が首を傾げた瞬間、隙をついたは腕を逃れて荷物を掴むと部室を飛び出していった。後にはなんちゃってクリスマスパーティの残骸が散らばる中にひとり、藤真だけが取り残された。

2日かけて悩んだ挙句、藤真は深夜に大地先輩の部屋を訪ねた。

翔陽の学生寮の退寮期限は卒業式から1週間となっている。それまでは退寮手続きをせず、使用料を支払っている限り、自由登校で学校に行かなくても滞在していて構わない。だが、年末年始は寮のスタッフが休みになる都合上27日の10時には退去しなければならないので、26日の今日がとりあえずチャンスだ。

快く部屋に招き入れてくれた先輩は自分はベッドに腰掛け、藤真に椅子を勧めてくれた。

「こんな時間にすみません」
「いいって。明日にはもう実家帰るだけなんだし。どうした、新体制、もう慣れたか?」

優しく微笑んでいる大地先輩は、ミスコンにエントリーされるほどの美少年ではない。練習で鍛えられて体はしっかりしているが、どちらかと言えばこざっぱりした薄味な顔だったし、優しげではあるが同性の藤真の目には魅力のある外見をしているようには見えなかった。

しかし、彼はそんな薄味の外見を補って余りある強力な「包容力」オーラを持っていた。だから今年の翔陽の精神的支柱だったのだ。実際やや出来すぎた感のある人格者に見えたし、同学年から後輩までみんなが世話になった。優しくて頼りになってつい寄りかかってしまいたくなる――

「オレ、先輩のことはプレイヤーとして本当に尊敬しています」
「おいおい、どうしたよ」
「今年は何度も助けてもらって感謝してます。だけど、そういう先輩だけど、実際はたった2歳しか年が違わないし、オレはあと2年で先輩を追い越す自信があります。先輩がキャプテンとふたりでこなしてた役割を、それ以上のことをひとりでやり遂げる自信があります。だから……

大地先輩は厳しい顔になって黙っている。藤真はそれを確かめると腹に力を入れて続けた。

「今夜だけ、先輩とか後輩とか関係なく、ひとりの男として、話、させてください」
…………のことだな?」
「そうです」

どんなに大地先輩が先輩の余裕で茶化してこようと誤魔化そうと、狼狽えまい。そう決意して藤真は先輩の部屋のドアをノックした。これは勝負だ。試合と同じ。腹に力を入れて、一瞬たりとも気を抜くな。相手の目を見ろ、些細な動きも見逃すな。

「やっぱり『付き合ってる振り』なんて嘘だったんだな」
「嘘ではないです。行き違いでそういうことになってしまいました」
「だけどお前はのこと、好きなんだろ」
「そうです。入部初日にひと目見た時からずっと好きです」
……なるほどね」

そうは言っても10代の2歳差は大きい。大地先輩相手に策を弄しても先を読まれて翻弄されるだけかもしれないと考えた藤真は、挑発に乗らないためにも手の内を全て見せてしまうことにした。隠しておきたいことなんかない。が好きなのは、彼女を今でも誰より想っていることは真実だ。

「藤真、こっちおいで。ベッド座んな。一対一、ひとりの男として同じ目線で話そう」

先輩がヘッドボードにもたれてあぐらをかくので、藤真は足元の壁に寄りかかって同じようにあぐらをかいた。身長は今のところ藤真の方が少し低いというところだが、これなら確かに同じ目線だ。

「先に言いたいこと言っておくか?」
「この間、テスト前で部活がない土曜日、駅でおふたりを見ました」
「ああ、見てたのか。まあそこの駅だからな」
「それから、24歳になったら結婚するという話も聞きました」

驚く様子もなくうんうんと頷く先輩の余裕が腹立たしいが、我を忘れてはいけない。藤真は腹に力を入れる。

「クリスマスには高価なバッグをプレゼントして、だけど今は付き合ってない、そう聞きました」
「そうだな」
「オレも今別にと付き合ってるというわけじゃないです。だけど、納得行かない」

用件はそれだけだ。あまりに不自然なふたりの関係はどうなっているのやら全容が全く見えなくて、だけどそれを自分が知らされていないのは理不尽な気がしたのだ。少なくとも大地先輩はオレの気持ち、知ってるくせに。

「じゃあ先に結婚の方を片付けておこうか。一応そういうことを言い交わしてるのは事実だ。が24、じゃなくて、オレが25になったら、っていうのが正しい。バッグの件もごっちゃになるけど、オレの家って、まあその、金持ちなんだよな。埼玉の古い地主みたいな家で、一族で会社やってて、オレは本家の跡取り」

穏やかな表情のまま淡々と説明してくれているが、藤真は身じろぎもせずに聞いている。実はこんな風に経済的に裕福な家の子、という部員は多い。だからそういう意味では珍しくない。

「で、まあそこからはよくある話。バスケットは大学まで。プロチームからどうしてもっていうスカウトが来ない限り、親父のやってる会社に就職する約束になってる。まあ、来ないだろうな。オレくらいのプレイヤーはありふれてる。だからそのまま就職で、そうすると、結婚はほとんど義務みたいなものになってくる。古臭い話だと思うだろうけど、そういうのが未だにまかり通ってる世界もあるんだよ。だけど正直、学生の間にそういう結婚を受け入れてくれる女を探してる暇はないと思うんだ。運が良ければ偶然出会うかもしれないけど、そんな都合のいい話があるとは思えないし。結婚までは仕事しててもいいけど、結婚したら専業主婦になって子供を積極的に作って子育てしてくれる、そういう女はもうこの国にはあんまり残ってないからな。ましてや大学まで進学してきてたら絶望的だ。ところが、が現れた。試しにこの話をしたら、頷いてくれたんだよ」

この部員たちに慕われ愛される先輩がおかしな世界で生きていくつもりなのだということに対するモヤモヤしたものは一旦、全部飲み込む。そこは関係ない。刺激の強い方向に流されて目的を見失うな。

……裕福な家なら、なんでも好きなものが買えると、思うでしょうね」
「もちろんそれだ。うちはそういう変な家だけどケチじゃないから、あいつの物欲は完全に満たされる」
「だからバッグも買ってあげたんですか?」
「2年間世話になったからな。何か欲しいものあるかと聞いたらバッグがいいって言うから」

にっこりと微笑む先輩は余裕たっぷりで、睨まないように気を付けている藤真は息苦しい。

「あの日は午後から東京で親とランチの予定で、それでバッグを買いがてらも連れて行ったんだ。具体的に結婚がどうのって話はしてないけど、のことは話してあったし、ショッピングにランチに送り迎えでははしゃいでた。まあ、テストはいつものようにギリギリだったけど、そこは今更だよな」

監督まで揃って部に引き止めた手前、の推薦に学校側が積極的なのは不思議ではない。本人が言うように補習で練習に出られないという事態さえ回避できればそれでいいのだ。

……そこまで話が進んでいるのに、付き合わないんですか」
「今は別にその必要もないしな」
「だけど、結婚しようって考えてるんですよね?」
「好きで付き合ってその結論として結婚するわけじゃないから」

これが本当に本年度翔陽のメンタルを支えてきた人の言葉だろうかと思うが、藤真は耐える。関係ない。

「好きでもないと、結婚するんですか」
「愛し合ってなくても書類上問題がなければ結婚したっていいんだよ」
「それで夫婦になれるんですか」
「ああ、そういう。死ぬほど好きではないけど、なら別に抱けるよ。だからそれも問題ない」

一瞬で頭に血が上る。抑えろと頭の中で叫ぶけれど、拳を握り歯を食いしばっていなければ殴りかかってしまいそうだった。誰にも優しくて折れそうな心をいつでも繋げてきてくれた人なのに、なんでこんなクソみたいなこと平気で言えるんだ。藤真は冷たい体が怒りの業火に包まれていくのを感じていた。

のこと好きなお前には腹立たしいことかもしれないけど、落ち着けよ」
……無理です」
「さっき自分でも言ったろ、付き合ってないって。だからお前は無関係、ただの片思い」
「なっ……
「だから落ち着けよ。いいか、その前にこれは、本人が望んで同意してることなんだ」

針が振り切れてしまいそうになっていた藤真は胸に細くて冷たい刃物を刺されたような気がして、喉がヒュッと音を立てる。本人に今の大地先輩の話を聞いた上で細かく確認を取ったわけではないけれど、そもそもの発端は確かに本人の言葉だった。無関係の片思いという言葉が藤真の喉を締め付ける。

「だけどたぶんもオレのことが好きなわけじゃないと思うぞ」
「は……?」
「さっきの話が出てて、それでどっちかが好きだったら付き合ってるだろ」
「意味が……わかりません」
「そりゃそうだろ。お前はより1年遅れて入部してきたんだから」

やっぱり何か隠してんじゃねえか。怒りと苛立ちが収まらない藤真は意識的に呼吸を繰り返して自分を宥める。

……本人が言わないなら黙ってようと思ったけど、結婚の話までバラしたんだもんな」
「何をですか……
はお前を振り払おうとしたんだ。それを台無しにしたくはないんだけど」
「だから、何を」
「自分が想っているという事実があればそれで正義だとか、思い上がるなよ、1年坊主」

大地先輩の言葉とは思えなかった。藤真はまた息を呑み、背筋を伸ばした。どういう意味だ。

はあと1年残ってるし、余計な口出しはしないでおこうと思ったけど、どうせあと2年、この翔陽はお前が引っ張っていくことになる。マネージャーの増員も必要。今からオレが話すことを引退するまで片時も忘れるな」

初めて見る大地先輩の怖い顔に、藤真は勢い頷いた。