在り方の問題、または指先の恋

6

越野が心配したこと、仙道が言ってやるよと安請け合いした件は、ふたりと全く関係ないところで進展があった。

中間ののちに進路指導があるという。まだ1年生なので具体的な話ではないにせよ、進学なのか就職なのか、もしくは何か目指すものがあるならその点について話し合いましょうという面談だ。今回は生徒と担任の一対一。ただしのクラスの担任は前科があるので副担任付き。

その進路指導の話を聞いた現在の若女将であるの母親が娘の首をとっ捕まえて、越野とまったく同じことを言ったのだ。江戸時代じゃあるまいし、日々の稼ぎで赤が出なきゃそれで問題なしっていう世の中ではないということを淡々と語って聞かせた。

そしていずれ言わねばならないと思っていたと言いながら、事務所に連れていき、越野の母たちがやっている経理の仕事を見せた。当たり前の話だが、は何が何やらちんぷんかんぷんだった。

「お父さんは、わかってるの、これ」
「当たり前でしょ、社長なんだから。みんなはそれを一生懸命サポートしてくれてるの」
「お母さんは?」
「わかってるに決まってるでしょ、私が店に出るようになったのはあんたが生まれた後の話だもん」

地元の高校を卒業後、の母はまず事務仕事から白波に入った。そこで働き、結婚をし、を授かり、妊娠中も事務所で働いていた。仲の良い同族会社なのでこういうところは融通がきいて楽だったそうだが、そして出産を経て改めて若女将修行を始めたわけだ。

「覚えてないかもしれないけど、私が正式に若女将になったのはあんたが7才の時だからね」
「それまではなんだったの」
「ただの修行の身」

それを背中に聞きながら、越野の母はウフフと笑った。

「現場は厳しいものねえ。私はそれが嫌だったから事務に残ることにしたのよ」
「それも彼女の選択。あんたは今中途半端な状態なの」
「接客修行も勉強もどっちも大変なのには変わりないけど……勉強が後回しになるとつらいんじゃないかしら」

ぼそりと付け加えた越野母の言葉に、の母は大きく頷く。

、お母さんはね、うちの細かいしきたりみたいなものとは別として、接客というものは一番最初に大きな壁があると思うの。初対面のお客様に敬意を払って、誠心誠意おもてなしをするという心を持つこと、おどおどしないでしっかりはっきりご挨拶ができて、気を配れること。その辺の飲食店でアルバイト初日の子なんか見たらわかると思うけど、いらっしゃいませがまず言えないのよ。大きな声で笑顔でいらっしゃいませがいきなり言える人は少ない。だけど幸い、あんたは小さい頃から店に出入りしてて、そこんところはもう完璧にできてる」

しかも接客歴は既に2年を越している。陵南の監督に挨拶をしたときも緊張はしなかった。

「もし本気でこの白波を継いでいきたいと思うなら、学ばなきゃいけないことが他にもあると思うよ」

事務所は和風ですらなく、越野の母たち事務方のスタッフは和服でもなく、パソコンにコピー機に大きなホワイトボードに、まるでそこらの会社と大差なかった。板場や賄い部屋ではあまり見かけない派手な色使いのジュースのペットボトル、スナック菓子、菓子パン。

白波は板場と接客で動かしているのだと思っていた。レジの計算が合っていればそれでいいのだと思っていた。

だがどうだろう、この書類の山、ファイルの数、伝票、パソコン。さあ若女将、今日から経営責任者です、こちらの事務方についても全て管理して下さいねと言われても、何をどうすればいいのか一体ここで何をしているのかすらわからない。それは着物を着てフロアや座敷に出入りしていれば覚えられる、というものではなさそうだ。

「お父さんはあんたが本気で社長になるだなんて思ってないの。古い人だし、いずれ自分の跡を継げる板前が育ったら、それと結婚して女将になればいい、くらいにしか考えてない。白波と無関係な人と結婚するという可能性すら、たぶん考えてない。だからの好きにさせとけとしか言わないの」

確かにの父親は何も言わない。アルバイトとして白波で働きたいと言った時も、いいよ、と二つ返事だった。理解のある父親だと思っていたのだが、どうもそうではないようだ。は背中が冷たくなってきた。

「何も超有名大学で学ばなかったら白波の経営はできない、とは思わないわよ。だけど高校の勉強すら疎かにしてるようじゃ……というのがお母さんの本音。じゃあ経営はできなくてもいい、誰かが白波を受け継いでくれて、自分は女将という名の従業員でいいというならそれも選択のひとつだと思うよ」

なりたいものなんかない、仕事は定時に終わって休日出勤がなくボーナスがちゃんと出るところがいい、というクラスメイトも少なくない。それと比べると、自分が白波で一生働いていきたいと願うことはとても「夢」らしいと思っていた。情熱も愛情もある。最先端の流行りから弾かれたような世界だけど、それでよかった。

けれど、「夢」にはそれを実現させられるだけの能力がいる。「白波で働くのが夢でーす」と言えば叶うというものではない。仙道や越野たちはあれだけ毎日練習したけれどインターハイには届かなかったのだ。夢とはかくも残酷な甘い蜜で、人はそれを求めて群がるけれど、口にできるのはほんの僅かな人たちだけだ。

さあ、どうしよう。は母の顔をじっと見つめた。

が白波のこと好きなのはよーくわかってる。だけど、好きなだけでは、ね」
「お母さんは……どうしてほしいと思ってるの?」
「私? 私はあんたが後悔しない決断をしてほしいと思ってるだけよ」

はもうそれ以上は何も言わず、ただ黙ってしっかりと頷いた。

新学期が始まったことで、仙道と白波はまた距離ができた。もちろん平日は毎日授業があるし、放課後は練習があるし、週末は国体のための合同練習で朝から晩まで海南大附属に出かけているからだ。よってとも特別に時間を作ろうとするわけにも行かず、色々宙に浮いたままになっていた。

一方国体代表選抜に漏れた越野は張り切って監督とキャプテン不在のチームをまとめており、同様に監督もキャプテンもいない時はオレがリーダーと考えている部員と静かにしのぎを削っていた。

しかし仙道と腹を割って話したせいか、越野の方も急に態度が軟化、に対してこれまでは顔を見ればガミガミという状態だったのが、特に何も言わないようになった。しかも国体直前には「一緒に見に行くか?」とまで言い出す始末。突然そんなことを言われたは驚いて思わず顔をしかめた。

「どうしたの急に」
「いや、その、見たことないだろ、試合」
「だってヒロが来るなって言ったから」
「そ、それはそうだけど」
「それにヒロ出ないんでしょ。先輩が出るか出ないかってくらいじゃ、陵南の試合というほどでは」

だったら冬の大きな大会の方がいいんじゃないの、と付け加えただったが、越野は白波の裏口で首筋をボリボリと掻いた。敬遠していた時間が長すぎて、今更普通に話すのですら照れくさいしむず痒いしちょうどいい言葉が見つからない。

「今回は、神奈川の代表的な選手だけ集めたチームで、陵南ってわけじゃねえんだけど、だけどその代わりあちこちから強いのが集まってて、だけどあいつはその中でも間違いなくトップクラスに入るから」

モゴモゴしている越野に「それこの間も聞いたよ」とは突っ込む。

「だーかーら、つまり対戦相手もそういう都道府県の代表チームなわけで、チームメイトも対戦相手も全部全部高校バスケットのヒエラルキーのてっぺんにいるようなのだけってことで、つまりだな、その方が仙道っていう選手の凄さというか、そういうのが、わかるから」

越野の言いたいことはわかった。わかったので、は俯いた。

……そういう凄い人だから近寄るなって、実際に見て理解しろってことね」
「ファッ!?」

また泣かれるのかと思った越野は慌てた。だが、覗き込んでみると泣いてはいない様子。しかし困った。仙道とはあれからまた散々話してとのことには口を出さないと約束した手前、「もうダメとは言わないし仙道の方もなんかそれっぽいよ」なんて言えるわけがない。

越野は目が回るほど急いで考えた挙句、あとは好きにしてもらおうという気持ちも込めて、腹を決めた。聞くところによると越野が心配していたようなことは当然若女将も心配していて、きちんと本人に話していたよ、と母から聞いたのでそれも安心している。

これまで邪険にしてきたことについては謝らなきゃイカンと思うが、それは少し待って下さい。まだ照れる。

「そういう、意味じゃねーよ」
「じゃあ何」
……オレも国体代表に選ばれるような選手じゃなかった」

学年が全てではないにせよ、2年生の自分を差し置いて1年生が3人も代表入りをしている。そういう世界なのだ。来年も選抜チームなら今度は絶対選ばれてやる、と思っているが、それでも仙道と同じようにはいかないのだと、越野も改めて感じていた。

「オレは仙道とは違う。天才じゃない。オレはオレのやり方で自分のバスケットをする」
……ヒロ?」
「だから、あいつがどんな道を選んでも、オレには関係ないことだって、そう決めたんだ」

今同じ高校で同じ学年でチームメイトだから、当然今目指すものは冬の選抜であり、来年のインターハイであり、それはもちろん陵南高校バスケット部の躍進で間違いない。けれどそれで終わりではないのだ。少なくとも越野は高校だけで終わらせたくないと思っている。

それは仙道と同じ道ではない。

「だからもうお前のことには何も口出ししない。国体見た方がいいと思ったのは、それが一番手っ取り早くあいつがどういう選手なのかわかると思ったからだ。他の意味はねえよ」

きちんと言いたいことが伝わっている気がしない越野は手持ち無沙汰なので腕を組み、ついでにふんと顔も背ける。どうにも仙道のようににっこり笑顔で優しく話しかけるとかそういうのは苦手だ。よくあんなこと平気でできるなと思うが、きっと生まれつきだ。そういうことにしておこう。

「だけどオレがここで働きたくないって思ってるのは変わらないからな」
「そんなこと」
…………あーもう、一回しか言わないからな!」
「はあ?」

越野は片手で前髪をグシャグシャとかき混ぜると、またの腕を掴んで隅に寄る。

「去年、あいつがここを気に入って楽しそうだからってしょっちゅう連れて来てた時、たまたまひとりでここに来て、そしたら板長とウチの親父が喋ってて、あいつら『あの子がと結婚して白波継いでくれたらいいね』とか言って笑ってやがったんだ。一瞬で頭にきたオレの気持ち、わかるだろ!」

話の内容も驚くが、越野が顔を赤くして照れまくっているので、は勢いカクカクと頷いた。ソーデスネ。

「クソ親父がふたり寄ってたかってのことも仙道のことも何もわかってねえ! と思ったらもう我慢できなくなって、だったら仙道は出来るだけ店から遠ざけよう、なんかお前らも仲いいけどそこを引き離しとけば板長たちが変な気を起こさないだろう、そしたら跡継ぎはのままになるだろう、って……

勢い越野は仙道とのことが心配なあまり頭に来てひとりで喚いていたことを白状してしまった。

「ヒロ……
「でももう知らん! あとはお前らの好きにすればいいし、クソ親父ふたりも自分でなんとかしろ!」
……うん、そうする。ありがとうヒロ」
「礼を言われるようなことはしてねえ!」

照れ隠しと言うか見栄っ張りというか、とにかく越野は全部吐き出してしまったのでがっくりと肩を落とした。その越野の左肩にはそっと寄り添い、ふんわりと抱きついた。

……私、なんとかして白波を守っていけるようになるから、越野もも守れるようになるから、ずっとここにお店があるようにしておくから、ヒロはたまにでいいから、ご飯食べに来てね」

もう声を出して返事もできなかった。越野は俯いたまま、しかしコックリと頷いた。

国体は概ね9月末から10月頭にかけて開催される。この年の開催地は東京だったので、越野に勧められるままは試合を見に行くことにした。土曜日の午前中、白波には友達の誕生日でお昼を一緒に食べると嘘をついてきた。越野とは一緒ではない。

越野は一緒に見てもいいと言ってくれたが、バスケット部の部員とも一緒だと言うし、そんなところにド素人が混じっても居心地が悪いだけだ。ひとりで出かけてこっそり試合を見てこっそり帰ってくればいいと考えて、はひとりで出かけた。

の母親が驚いたように、コートを見下ろしたはなんてでっかい人がこんなにゾロゾロいるんだろう……と驚愕しつつ、すぐに仙道を見つけた。普段通りぼんやりした感じで、おそらく一緒に代表入りをしているという陵南の選手とふたりでのんびり喋っている。

視線をずらしてみると、少年の部とは思えないような人がいたり、すごく小柄な人がいたり、アイドルみたいな顔した人がいたりと、神奈川代表は中々に個性が強い。けれどみんなみんな厳しい顔をしていて、一部じゃれて遊んでいる感じのもいたけれど、仙道のように穏やかに笑っている選手はいなかった。

ヒロはああ言ってたけど、本当にこの中でもトップクラスな人なんだろうか。大丈夫?

というか確かバスケットボールは5人対5人で行われるというのに、この代表の人数は一体。これじゃ出られないんじゃないの、などとド素人がぐるぐる考えている眼下で試合が始まる。が勘繰った通り、仙道はまずはベンチスタートのようだ。ホイッスルが鳴り響く。

直後、背中を丸めてコートを見下ろしていたは、驚くあまり椅子の背もたれにべたりと張り付いた。なんだかスピードが早すぎて目がついていかれない。ボールどこ! てか神奈川代表も対戦相手も開始一秒で戦闘開始って感じで怖い! ヒロこんなところに入りたいの!?

始めて見る高校バスケットが国体という中々に刺激の強い観戦をしているだったが、数分で疲れてきた。ただでさえ慣れないのにあまり食い入る様に見てしまうともたないかもしれない。まだ先輩も出てきてないんだし……と少し意識を離しながらコートを見るようにしていた。

神奈川代表は序盤からずっとリードを保ってきたのだが、途中じわじわと押され始めて、対戦相手が勢いに乗り始めた。そのあたりで仙道が投入されたので、は少し身を乗り出し、これでやっと見られる、と安堵のため息をついた。これである程度観戦したら途中で抜けてもいいかな、刺激が強くて疲れるし、と思っていた。

だが、そんなをよそに会場にはどよめきが走る。えっ、何今のざわざわしたの。もしかして先輩が出るから……じゃないよね? だが、少々狼狽えたの眼下で、神奈川代表は息を吹き返した。

そこからの数十分、途中で帰ろうかと思っていたは息をするのも忘れるほど集中して試合を見続けた。バスケットのことは何もわからないので、ただ運ばれていくボールの行方を追うので精一杯だったけれど、それでも仙道がチームの中でどういう役割を果たしていたのかは、わかった。

そして今度こそ越野の言っていたことの全てがよくわかった。

放課後の教室で、白波で、夏祭りで。ぼんやりニコニコ顔で「ちゃん」と声をかけてくるのと同じ人とは思えなかった。人の机で居眠りして大あくび、叩き起こせばのろのろと起き上がるあの仙道と同じ人間に見えなかった。何よ、素早く動けるんじゃん……

本当に、凄い人だったんだね。何度も会ってて長い時間を一緒に過ごしたりもして、近い存在だと思ってた。だけど私の知らない時間の中で先輩はこんな風に戦ってて、こんなにたくさんの人に応援されて、代表の人たちにもほら、よくやったなって、肩を叩かれてて。

高校が終わったら大学、その先にはもっともっとすごい世界が待ち受けてて――

越野の言葉が蘇る。仙道の前に開けているのは世界、は地縛霊のように白波から動かないことを夢だと心に決めていて、それはどうやっても重なり合わない道なのではとしか思えなくなってくる。甘っちょろい愛だの恋だのがなんとかしてくれる問題じゃなくて――

この試合以来、時期的に中間テストが迫っているということを理由に、はぱったりと仙道と連絡を断った。そして、高校に入学して以来始めて、白波でのアルバイトを5日間も休んだ。

ちゃんと連絡取れないんだけど」
「オレに言うな」
「店も休んでるって言うし」
「テスト前だからだろ」
「お前何言ったんだよ」
「何も言ってねえよ」
「何か言った顔してる」
「どんな顔だよ」
「後はもう知らねえ勝手にやれって顔」
「正解だよ勝手にしろ」
「テスト前は時間あるっていうのに……
「テスト前くらい勉強しろ」

国体では当然活躍したし、越野の読み通り関東圏の指導者の間ではインターハイ出てなかったけどいい選手がいますね的な話題の筆頭となり、早速スカウトも来た。まだ夏のタイトルが終わったばかりなので話を少し、という程度だったが、練習の見学などはいくつか申し入れがあった。

それを経てテスト前、もう国体の練習で週末が潰れるということもないし、練習もできないし、を誘ってどこかに遊びに行こうかなと考えていた仙道はまったく連絡が取れなくなってしまったので機嫌が悪かった。

「そういえばお前テスト前はすぐ消えるよな」
「消えるってなんだよ帰ってテスト勉強してるだけだろ」
「えっ、勉強してんの?」
「いい加減にしろキャプテン」

越野の父は息子の成績が振るわないというようなことをに言っていたけれど、彼にとっての「良い成績」とは「ランクが一桁」という意味であり、越野は部活で忙しい割に勉強は怠っていない。それこそランクが一桁というわけには行かないけれど、もし推薦が取れないようなら自力で受験して高校の先もバスケットを続けたいと考えていたからだ。なので彼には仙道を蔑んだ目で見る資格はあると言えよう。

しかし国体を境にが仙道と距離を置いたことは明白で、それがわかるので越野は仙道の方を見ようとしない。帰ろうとしたら頭をガッと押さえられて捕まった越野は渋々仙道と並んで廊下の窓から外を見ている。

「てかマジでアレの何がいいんだよ」
「お前はなんかこう、わかりやすい、いかにもな美人好きだよな」
「悪いか!!!」
「だからすぐ続かなくなって別れるんだろ~」
「ちょっと待てなんでオレが説教されてんだ」

外を見たまま、越野は足を跳ね上げて仙道を蹴る。仙道もポンと蹴り返す。

「オレはバスケのこと以外であんまりガツガツしてるの、性に合わないから」
……だろうな」
「中学ん時の元カノにさ『私お母さんじゃないんだけど』って言われたんだけどさ」
「何したんだ」
「オレ、母親にはそういうこと求めてないけど、彼女にはつい、甘えたくなるんだよな」
「それもどうなんだ」

もうツッコミしか出てこない越野だが、仙道は楽しそうに目を細めている。

「オレもお前が好きそうなクドい美人て何がいいのか、わかんねえもん」
「クドいて」
「オレは板長のご馳走より、白いご飯に賄いのおかずと出汁汁の方が好きなの」

飯の好みと女の好みを一緒にすんなとツッコミたい越野だったが、めんどくさくなってきた。もう好きにしろと突き放したはずだ。勝手にしろ。ものすごく勝手にしろ。ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向く越野をちらりと見た仙道はまた柔らかく微笑む。

「そういうのも、あっていいだろ」