続・七姫物語 牧編

01

大陸の片隅にある小国ひしめく地域に、最近話題のとある国がある。歴史はそこそこ、国土もそこそこ、産業もそこそこという何でもかんでも「そこそこ」と言っておけばとりあえず間違ってない、という程度の国だ。

この国が何かと話題になるのは、最近建国以来初となる女王が誕生したからだ。

小国ひしめく地域なので建国以来の歴史に関しては隣接する他国もよく知るところなのだが、ずっとひとつの王家が統治してきており、国王は男性に限り、よくあるように長子の血統と兄弟間男子が優先の継承が法で定められていた。特に内紛もなく、王家自体はずっと安定していた。

ところが、遡ること3年前、長く周囲の国々と小競り合いを続けてきた末にやっと結んだ停戦協定を破られ、無防備な城と城下町に攻撃を受けて王女ひとりを除き王族がほぼ全滅してしまった。

そんな中を辛くも湖水地方へ逃げ延びた王女は、やはり命からがら避難してきた家臣を集めると、自分が女王になると言い出した。王家の壊滅で国も消滅かと怯えていただけに、この王女の頼もしい姿勢は絶大なる賞賛を持って迎えられ、この国はその命脈を繋ぎとめたのである。

地方で政務を取っていた王子の暗殺に成功し、中央の城を叩けば総崩れだと踏んでいた敵国は突然湖水地方から湧いて出た女王軍に翻弄され、またこの国を長く守ってきた騎士団の活躍により城も奪還され、そうこうしているうちに周辺の国々が首を突っ込んできて、またこの地域は大乱戦に逆戻り。

当然「女王と言ってもまだ年若い小娘など」という評価が一般的であったが、しかしなぜかこの女王は判断はいつも的確で、着実に自国を取り戻していった。それを28ヶ月も戦い抜き、やっと奪還されたまま無人で放置になっていた城に戻ることになった。

――とまあ、ここまではよかった。犠牲はあったが戦いは報われ、元の争いのない生活に戻していこうとする女王の方針は国民にも広く支持され、この国は建国以来と思われる官民の心がひとつになった状態であった。

しかし、そういう良い流れの中にあって、ひとつだけ重要な問題が片付いていなかった。

王女の結婚である。

とはいえもう3年も女王ひとりで国を治めてきたわけだし、彼女が至らないからだとか、そういうことではない。民は女王がこの国を治めることには何ら異論はない。が、周辺の国々はそうはいかない。

何しろ女王は御年20歳、このあたりの地域では嫁して外交の手段とするには少々年齢が高いけれど、一般的にはほぼ適齢期。この国でも20歳前後の結婚が最も多い。そんなわけで、まずは見合いの申し込みが殺到した。国王にはなれなくても女王の夫で次期国王の父になれる。将来性は二重丸。

しかし、城に帰還した直後というのは先の戦闘でボロボロになった城郭を修繕している真っ最中であったし、国内の安全を徹底している最中でもあったし、それにしてはとにかく人手不足で毎日てんやわんやという日々だった。女王は見合いの話はちょっと待ってくれ、と先延ばしを繰り返していた。

この「先延ばし」がどうやら方々にうまく伝わらず、誤解を呼んだようだ。いわくあの国の女王は将来の夫となる男を選り好みしていて、もし彼女に選ばれたら国王と同等の権限が与えられるらしい! と完全な誤情報が広まってしまった。しかも、めぼしい近隣の王族貴族が断られた後に、である。

すわ、あの国の女王は身分に関わらず国王の器を持つ益荒男を求めているらしいだの、見目麗しい優男でなければダメだの、とにかく噂が独り歩きを始め、結果として女王のもとには更に求婚目的の謁見願いが殺到する羽目になった。日に4件までと制限を設けても減る気配がない。

「そういう余計なことに時間を取られ続けているのも負担ではないのですか」
「かといって門前払いを食らわすわけにもいかないじゃない」
「そうですね。最近は特にお金持ちが増えてきましたからね」

人手不足のせいで女王の補佐役をする羽目になっているのは、誇り高き騎士団の副団長、神である。騎士団の方も決して暇ではない……というか普通に忙しいのだが、団長が外れるわけにはいかないので副団長が出向中。またこの神が細やかな仕事ぶりを見せるので、執務室は彼を手放したがらない。

神にさらりと突っ込まれた女王・はばたりとテーブルの上に突っ伏した。

「私が疎開してた頃と合わせたら5~6年も戦やってたんだから、金がないのは当たり前でしょう。それにつけ込んで援助してあげましょうかだのなんだの、戦時下は声もかけてこなかったくせに! みんな貧乏が悪いんだ! 騎士団にもらったお金なんか城下の下水工事したらなくなっちゃったし!」

女王が孤軍奮闘していた28ヶ月、騎士団は完全に行方をくらましており、陰ながら女王の手助けをやっていた。いかがわしげな秘密結社を名乗り、代表は影武者を立てて女王の作戦が円滑に行われるよう手を尽くしていた。だから女王は大きな失敗もなく国を取り戻したのだ。

そういう中でちゃっかり金を溜め込んでいた騎士団であるが、城に帰還の際はそのほとんどを国庫に上納、自分たちは騎士の位と騎士としての仕事と住む場所があればよい、と言うので、全て右から左でそのようになった。現在の騎士団は所帯も持っていない若い世代しか残っていないので、とにかく正式な騎士に戻ることが最優先だったのだ。

そしての言うように、戦乱のさなかには見舞いにも来なかったような連中が大挙して押し寄せ、援助してあげますよ、お付き合いしてみませんか的なことをぬけぬけと言い放っていく。ド貧乏ゆえにそれをおととい来やがれと蹴り出せない哀しみが執務室を満たしている。

だが、別に女王は結婚が嫌なわけではないのである。

「だからさっさとご婚約だけでもなさればよろしいのに」
「そのために焦るのもなあ……
「回り回って結局はおふたりのためと思いますが」

何を隠そう女王には恋人がいる。件の騎士団長、牧である。女王とは小さな頃から共に育った幼馴染であり、この3年の間は離れ離れ、先日ようやく騎士団の帰還で一緒にいられるようになったばかりだ。なので当然周囲は段取り良く進めて女王と騎士団長との結婚を執り行いたかったのだが……

「だってもう何ヶ月になりますか。牧さんほとんど陛下のお部屋でお休みになってるじゃないですか」
……そういう生々しい話を君とはしたくないんだけどね」
「お世継ぎのこともあるんですから、町娘のような感覚では……

そもそもふたりはの疎開の間も3年間離れて生活していた。は疎開先で、牧は騎士団の新米隊長として過ごし、停戦協定が締結したのでしばらくぶりに再会――したと思ったら攻め込まれたのだ。それでまた3年。そういうわけなので現在幸せに愛し合っている恋人同士ではあるのだが、

「何も明日すぐに結婚式とはならないんですし、せめて婚約だけでも発表なされば婚約目的の謁見願いが減るのではありませんか。それに、自分可愛さに言うわけではありませんが、人手不足も甚だしいので、余計な仕事は増やしたくありません」

神の言うように、騎士団長との婚約は法的にもまったく問題なし――というかそもそもその法自体が現在ちまちまと改正されている真っ最中である。何しろ緊急事態だったので強引にを女王に即位させてしまった。その正当性を保ちつつ隙を作らないように法律家たちが奮闘中だ。

なので今すぐこの執務室で各種書類を作成し、には家族がいないので王家の承認は飛ばして、上院下院と裁判所に書類を提出、3ヶ所で申請が通ったら国民に通達、これで完了。上院下院と裁判所に通す書類など形ばかり、これも右から左で即通過である。おそらく2日とかかるまい。

だが、ふたりはどうにも積極性に欠ける。

…………まさかとは思いますが、隊長から求婚されてないんですか」
「あはははは」
「嘘でしょ、まじですか、何やってんですか」

まさかの大当たりで神は狼狽えた。いくらなんでもそのくらいは終わってると思ってたのに! そして神を始めとした牧の部下たち秘密結社経験者は元々牧が隊長を務める小隊の騎士であったため、未だに「隊長」と呼ぶ。事情をよく知るといればなおさらだ。

「ねえ、もし神くんこれが自分のことだったらどうしてる?」
「ええとその、率直に申し上げて、陛下が疎開から戻られた時に思いの丈を打ち明けていたと……
「ああ、まずそこ」
「それでまあ、合意を得ましたら、なるべく早く婚約だけでもと思いますけど」

が疎開から戻った時、牧は「戦が終わればは他国へ嫁ぐ」という現実から逃げるようにして彼女を避け、一緒にいたがるを拒絶し続けていた。婚約どころの話じゃない。

「まあそのくらいが普通だよね、この国だと。婚約の段階なら後で破棄も出来るし」
「ちょっと古くさいかもしれませんけど、伝統に則って新月の夜にしますね」
「何回新月見送ったかな……新月の時は暗いからね~さっさと寝ちゃうよね~」
「笑いごとじゃないですよ陛下……

この女王陛下、元からだいぶ活発な方であったが、ひとりで8カ国を巻き込んだ戦を指揮している間にずいぶん逞しくなってしまった。なのでこの神を始め家臣たちがちくちくと突っついてもあまり本気にしていない。は頬杖をついてニヤリと唇を歪める。

「自分が次の王か女王の父親になっていいんだろうか、って疑問みたいよ」
「そんなの……牧さんだけでしょうそんなこと思ってるの」
「本人曰く、牧家は平民の出だからとかなんとか」
「ああ、まあ、確かに牧家の初代に当たる方は、はい、そう伝わっておりますけども」

がきょとんとした顔をするので、神は肩を落としてため息をついた。オレが話すんすか。

「流れ者だったそうですよ。だけど腕利きの剣士で、しかも兵法に詳しく、雇ってくれ、と」
「へえ、知らなかった。それいつの話?」
「300年前」
「そんな古いこと気にしてんのか」

はつい吹き出す。騎士団は確かにそういう怪しい出自の一代目を持つ家の者も少なくない。しかしそれが国の危機になったことはなく、牧家などその初代の優秀なところを代々受け継いでおり、現在3代に渡って団長職に就いているが、それは無意味な世襲ではなく、本当に適任だったからだ。

「そんなことしてたら他の男に取られますよほんとに……
「取られそうにないから安心してるんじゃないかな」
……仲睦まじいのが裏目に出ましたね」

王女と騎士団長はそれはもう仲睦まじい。時と場所を選ばずイチャつくなんていうことはないけれど、何しろ都合6年離れ離れでようやく恋仲になったわけだし、神の言うように牧は基本の部屋で寝起きをしているし、が牧以外の男に心惹かれるというのも現状考えづらい。

「じいやたちは自分から結婚してくれって言えとか言い出すしさ」
「ちょ、それは……女性なのですから、殿方の方から求婚してほしいと願うものなのでは」
「そんな夢見る少女みたいなこと言ってないでさっさとしろってさ」
「いやそれはおかしいです。牧さんは仮にも騎士なのですから、そのくらい出来ないようでは」

戦がなければ騎士団の仕事は王家の警護が主な役目である。当然式典などの公式な場で王家の人間に付き従うことも多く、そのため古来より徹底して「騎士は王家の婦人を最優先でお護りする」という誓いを立てている。王家の婦人に危険あらば国王にも刃を向けるべし、というガチガチの伝統だ。

さらに牧の父親である先代の騎士団長は特にこの誓いを重んじていて、なおかつ自身に娘がなかったのでをとても可愛がっており、その部下であった神たちもその意識が強く、しかも仕える相手が女王になってしまったので、主君を護るという使命に燃えている。隊長がヘタレなだけです!

「横から突っついて差し上げたいのはやまやまなのですが……
「そんなことしても本人が腹を決めるまでは梃子でも動かないんじゃないの」
「では隊長のせいで謁見が切れなくて私が忙しいという方向から突っつき回します」

真剣な顔で言う神にはけたけたと笑った。自分が婚約することで本当に謁見が減るなら、神の仕事も減る。自分が騎士なのか補佐なのかわからなくなってくる日々は終わる。

「ところで陛下、例の第4王子様のお母上の件ですが」
「えっ、何かあった?」
「いえ、急速に快方へと向かわれているようです。医師の見立てでは環境がよろしくないのではと」
「でしょうね」

牧たち騎士団が帰還してきたちょうど同じ日、見合い目的での謁見が2件入っており、そのうちのひとつが某国の第4王子様だという話であった。だが、謁見の間にやって来た王子様、まだ5歳だった。

どうやらその第4王子様の母上である某国の王妃様の独断であったらしく、しかも彼女、王妃は王妃でも第3王妃であり、自身と息子の行く末を儚むあまり、5歳の息子を20歳のと結婚させようと考えていた。そういうわけで王妃殿下の様子がおかしいことに気付いたが逗留を勧め、静養させるように務めてきた。

「国王と正妃がいとこ同士、第2王妃が国王の本命、っていうところに放り込まれたわけでしょ」
「その上既に3人いる王子の配分は恐ろしいことに第2王妃が第1王子の母親という有様ですからね」
「なんでそこにさらに側室をあてがったのよ」
「単に政治的理由のようです。必要があったわけでは」
「それで運悪く男の子授かっちゃったわけね」

第4王子様はまだ5歳だが、その上の3人の王子たちもそれぞれまだ未成年である。年齢が近いので正妃と第2王妃は既に火花を散らしているという話だし、起こしてもいない下克上を警戒して誅殺されたらどうしようと怯えるあまり、第3王妃殿下は単独行動に出たというわけだ。

「私の名前で殿下に逗留を勧めている旨を伝えたけど、特に怪しむ様子もなかったみたいだし」
「ああ、それは親書を届けた騎士が『女子同士すっかり仲良しで』と吹き込んでおいたそうです」
「それを信じる方もどうなんだ」

しかし頭上でいつもバチバチやっているふたりがいないので、王妃殿下はすっかり心労が取れ、現在は城下の療養所に通いつつ、王宮内の国賓用の館でゆったり過ごしているという。

……うまい縁があればだけど、あのふたり貰おうか」
「持参金目当てですね?」

ポツリと言ってみたは、またばったりとテーブルに倒れた。

「何でよ……私が王妃殿とほんとに仲良しかもしれないでしょ……
「我が国がド貧乏なのは嫌でもわかることです。タダで貰えば金がかかるだけですしね」
「ううう……一部の戦争成金だけが儲かって我々はド貧乏が終わらない……
「それに跡継ぎの保険にもなりますね。あちらも良いお血筋の王子には違いありませんし」

王子と王妃を逗留させたいのだが、という親書を届けたが、王子の父親である国王からは返書はなく、使者に立った騎士から了解を頂きましたという報告があっただけ。いくら戦終わりたてホヤホヤで新米女王の国だからと言ってあまりにも無警戒、関心がないと考える方が自然だろう。

「てか、なんだか神くんは最近じいやとか大臣みたいになってきたね」
「勉強して継いでくれないかとは言われています」
「やっぱり? だったらさ――
「私は15の時に騎士の誓いを立てています。それを破るのは死ぬ時です」
……すいませんでした」

神に限らず、この国の騎士団というものはとにかく男児憧れの職業であり、名誉職であり、正式な騎士として任命されるには少年部隊での厳しい訓練を耐え抜かねばならず、そのため全員が騎士という称号に誇りを持っている。過去にも転職はほぼ見られない。これはの失言。

「ですがそういったことも陛下のご婚約が成立しないことには」
「ダメか……
「しかし一体どこにこんなに隠れていたんでしょうね、陛下のご夫君を望む殿方が」
「なんか引っかかる言い方だな」

まるで以前の自分には求婚したいと思わせるものがなかったと言われている気がしてムッとしたの傍らで、神は机の上の書類をてきぱきとまとめていく。最近ではかなり遠方の国からも見合い目的の謁見が増えていて、高貴なお方が使者だけ寄越すという例も増えてきた。無礼千万も甚だしい。

すると神は不意に手を止めて、親書らしき封筒を選り分けた。

「陛下、じいやさんの書き付けがあります。陛下あてのお手紙でしょうか」
「私、手紙をやり取りするようなお友達はいないんだけどね」
「ええと……某国の王立学院の封蝋ではありませんか、これ」
「えっ? 王立……ちょっと貸して」

神の手から封筒を受け取ったは差出人を確かめるとはしゃいだ声を上げた。

「先生! 先生からだよ!」
「先生……? 確か陛下のご指導をなさっておられた方は」
「あ、そっちじゃなくて、疎開先で私たちの勉強を見てくれた方でね」

王家の子女の学問指導を一手に引き受けていた老教授は先の戦の際に蔵書を守らんと避難を拒んで自宅に籠城、火をつけられて落命した。なので神は首を傾げたわけだが、なるほど、疎開先のことなら神たち騎士団は面識がない。この国の王家と縁がある学者か何かであったのだろう。

「そう。とんでもなく遠いけど、100年くらい遡れば血縁があるの」
「それがご縁で家庭教師を」
「戦で亡くなった方の先生はものすごく厳しかったから、こっちの先生はみんな大好きでね」

しかも疎開していたのは女性と子供だけ。鞭のような指し棒で机を叩きまくる教授より楽しく学べたに違いない。の表情も明るい。

「えっ、先生ここへ来るの!?」
「お見えになるのですか」
「確か先生は歴史の研究をなさっておられる方だったんだけど、調査でこっちへ」

戦の間は危険区域に指定されていた場所も多く、先生のような学術目的の旅行者は特に間者を疑われやすいので近寄れないことが多かった。だがそれが無事に解除になったので、調査がてらご挨拶に、としたためられていたらしい。これはじいやも重要であると書き付けるわけだ。

「早ければ数日で到着するみたいだけど、これはおもてなしの準備をしないと」
「ご先方はおひとりですか? お連れ様は」
「うーん、ひとりじゃないかな。先生は独身だし、助手もいなかったはず」
「それでは王宮内の館でよろしいでしょうか」
「お願い。あとで私も確認に行くので準備だけ伝えておいてください」
「かしこまりました」

現在例の第3王妃様と5歳の王子様が滞在している館と同じだ。要人の逗留のために王宮内に8棟あり、今のところ連日の謁見でもこの館を勧めるような来客はない。ひとりでは少し広すぎるけれど、女王の恩師に町の宿というわけにもいくまい。

「おひとりでしたら、身の回りのお世話の必要がありますか?」
「えっ、そういうのはいらないんじゃない……?」
「お食事などは陛下とご一緒でよいのでしょうか」
「それは初日だけでいいと思う」
「そんなほったらかしでいいんですか」
…………もしかして神くん、先生のことお年寄りだと思ってる?」
「えっ!? いえその、はあ、確かにそんな感覚でおりました……

はにこにこと嬉しそうな顔で笑い、軽やかな声で言った。

「やだなあ、先生、私より10歳くらい年上なだけだよ! しかもかっこいいの! 疎開してた間、みんな先生に教えて頂けるのが楽しみで、小さな子なんか先生のお膝で古典を読み聞かせてもらってたんだから! ああだから、女の子の使用人はだめだよ。みんなポーッとなっちゃうからね」

は楽しそうに笑っているが、神は笑うに笑えない。

牧さん! だから早くしろって、言ってるのに!!!